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「きれいを形にして再生する」その先へ。老舗クリーニング店4代目が古着屋へ転換したリアルな軌跡

2 時間前
読了時間: 6分


はじめに


こんにちは、古着再生工房INOTORI (イノトリ)のKayokoです。

今日は、クリーニング屋と古着屋の両方の現場を経験してきた立場として、「なぜ私たちが服を販売するだけでなく、再生させることにこだわるのか」「その意味と舞台裏」について改めてまとめてみたいと思います。



つるやクリーニング自社工場(当時)
つるやクリーニング自社工場(当時)


老舗の重みと、拡大路線への違和感


私はもともとずっとクリーニング畑にいたわけではなく、前々職は整体の仕事をしていたのですが、父亡き後、創業1932年の老舗クリーニング店の四代目兼職人として事業を引き継ぐことになりました。

始めてみると、実際に大変だったのは仕事そのものというよりは、先代の部下たちとの関係性や、既に定まりつつあった社内ルールの打開策を考えることでした。


それでも、日々の作業——————例えば、ボイラーを起動して朝早い空気の中で蒸気が立ち上がっていく景色や、きれいに仕上がった衣類が整列して工場から旅立っていく様子を見ていると、次第に心が整っていくように感じたのを覚えています。


しかし当時の自社店舗は、直営・フランチャイズ合わせて19店舗。 本来の自分では請け負いきれない規模であり、「この拡大路線は、いまの時代感と合っていないのではないか?」という強い違和感を抱くようになっていました。

経営者になりたての頃、さまざまな方と出会う中で、拡大路線だった先代とは違う「自分たち独自のクリーニング店運営の方向性」を模索。過剰に拡大されていた部分を縮小しながら、事業の濃度を濃くすることを念頭に置き、新しいクリーニングサービスの導入や、地元の職業体験授業「未来くる(みらくる)ワーク」で中・高校生の受け入れ等、様々なことにチャレンジしていきました。



職業体験授業「未来くるワーク」を体験していただきました。※写真は24時間引き取り可能なクリーニングBOXにクリーニング品を入れてるところ
職業体験授業「未来くるワーク」を体験していただきました。※写真は24時間引き取り可能なクリーニングBOXにクリーニング品を入れてるところ

同業者様が立ち上げたスーツクリーニングブランド「男前クリーニング」の初期から参画。富士スピードウェイでこのロゴを観た時は感動しました
同業者様が立ち上げたスーツクリーニングブランド「男前クリーニング」の初期から参画。富士スピードウェイでこのロゴを観た時は感動しました


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※クリーニング店運営時代にさいたま市産業創造財団様に取材していただいた記事でも、異業種参入への経緯と将来への展望をまとめていただきました。


▼詳細は下記リンク先から


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2014年、リユース・リサイクル事業への挑戦




そんな中、今の「古着再生工房INOTORI」につながるきっかけとなったのは、2014年に始めた「衣類のリユース・リサイクル事業」でした。


「服をどこかから回収し、循環させなければならない」と考え、まずは直営店の店頭で「持参いただいた服の重さに応じてクリーニング金券をお渡しする」というサービスからスタート。最終的には買取サービスまで展開していきました。

最初は1店舗から始まった衣類の回収ですが、裏側は決してきれいなことばかりではありませんでした。

回収した服の仕分けや状態確認をクリーニングのスタッフさんにお願いしたところ、本来の業務と内容が大きく異なり不満が出始めてしまったのです。そのため、最終的には私を含め1〜2名で回すことになりました。


回収した服は、クリーニング店の店頭ということもあり衛生的にひどい状態のものはあまりありませんでしたが、ポケットから昔の写真が出てきたり、時には何故か「服の温度が必要以上に冷たすぎる」と感じることも。 バックボーンは分からずとも、それぞれの服たちが、持ち主である人と思いを共に旅をしてきたことだけは痛いほど伝わってきました。


この時に「服を回収し、循環させることの大変さ」を身をもって知りました。(※現在は提携企業様や市場から仕入れていますが、この時の苦労があるからこそ、回収に関わる方々の大変さは 理解しています。)


翌2015年、ありがたいことに「さいたま市ニュービジネス大賞2015」でこの取り組みを表彰していただき、多くの方からビジネスをブラッシュアップするためのアドバイスをいただく機会に恵まれました。





テスト販売での驚きと、現実に立ちはだかる「設備と経費の壁」

ビジネスコンテストにエントリーする前に、初めて当社直営店にて回収してクリーニング後の古着をイベントとして販売を行なったのですが、この時のイベント名が後々ショップ名にも繋がる「衣の鳥市(いのとりいち)」という名前でした。


2015年開催・衣の鳥市の様子(店内)
2015年開催・衣の鳥市の様子(店内)
2015年開催・衣の鳥市の様子(店外)
2015年開催・衣の鳥市の様子(店外)


イベント後は受賞したことやクリーニング業の忙しさがあり、当時は「古着を販売する」というイメージはほとんどありませんでした。しかし、試しに個人で古着を販売してみたところ、思った以上に売れ、心底びっくりしました。この時の驚きが「いつか将来的に業種転換ができるかもしれない」という希望に変わっていったのを覚えています。


しかし、いざ業種転換を考え始めたとき、目の前に立ちはだかったのが「設備と経費の問題」でした。


クリーニング業は、専用の大型機械や設備が整っていれば少ない人数で効率よく作業できます。しかし、業務用機械は新規購入で莫大な費用がかかるのはもちろん、日々のメンテナンス費や、しみ抜き薬剤・洗剤・溶剤・ビニール・ハンガーといった資材費などの固定費が重くのしかかります。大量の需要があれば回収できますが、クリーニング事業を縮小しながら古着リユース業へシフトしていく中で、この重い設備維持費を払い続けるのは極めて厳しい現実がありました。


一方で、古着リユース業にも古着の仕入れ代や交通費、在庫が多ければ倉庫の家賃が。またECサイトの構築費やシステム運用費、広告・デザイン・データ分析などのマーケティングを外注するならその費用もかかります。


夢はあっても、かかる費用負担が重すぎると続けられない——。


検討を重ねた末、クリーニング店舗の閉鎖、新しい業種への転換、作業環境の整備を同時進行で進め、すべての仕様を「ネット古着リユース」へと切り替える大きな決断をしました。


クリーニング繁忙期には毎年たくさんの依頼が。地元の皆様、ありがとうございました!
クリーニング繁忙期には毎年たくさんの依頼が。地元の皆様、ありがとうございました!



「洗いのプロ」だからこそ届けられる、新しい服の価値


業種が変わり、設備は相当コンパクトなものに変わりましたが、私たちの中に絶対に変わらないものがあります。

それは、「クリーニング業の中で培ってきた、洗った後の服の数々の姿(生地やダメージの状態)を確認してきた圧倒的な知見」です。


服がどう傷み、どう再生できるのか。 長年服の命と向き合ってきた「クリーニング師」としての経験は、古着を楽しんでいる方々に対してきっと貢献できる最大の強みになると信じています。




ズボンプレスをする四代目(当時)
ズボンプレスをする四代目(当時)


私たちが日々行なっていることは、前の持ち主様と思いを共にしてきた古着の良い部分を残しながら、余分な汚れや修復すべきところをメンテナンスして一度リセットし、もう一度新しい息を吹き込むこと。


これからも「古着再生工房INOTORI」として、みなさまに再生された一期一会の一点物の古着をお届けしていきます。







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【きれいの記憶をつなぐ古着屋 INOTORI】



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